心を開く勇気

7月にポートランドで参加した世界征服サミットの基調講演のトップ・バッターはDr.Brene Brownでした。彼女は長年の研究の結果「心を開くこと」について語った”Power of Vulnerability”というTEDトークの動画で大変有名になりました。この基調講演については世界征服サミット同志である堀さんのこちらの記事にまとめられています。今読み返してみてもあのとき会場で味わった感動が蘇ってきて幸福な気分になりました。

この世界征服サミットで出会ったサンディエゴの友人Gregは、去年のサミット参加以来起こした具体的な行動のひとつとして、自分のラジオ番組を始めていました。1年ほどがたった今、彼のラジオ番組でDr.Brene Brownをゲストに迎えてインタビューをしたエピソードが昨日放映されたのです。彼女が長年追求しているテーマである“Vulnerability”とは、日本語では「脆く、傷つきやすいこと。攻撃に対して弱いこと」と訳されています。これは英語でも文脈によって意味が違ってくる言葉のひとつで、たとえば戦争や喧嘩など実際の戦いや、あるいは法廷ドラマやアメリカで架橋を迎えている選挙戦などの場面においては、“being vulnerable”ということは何をおいても「避けるべきこと」になります。弱みを見せたら相手にそこを付け込まれて攻撃されてしまいますから。でも、この世界で自分と折り合いをつけ、他人との関係を構築しながら、ハッピーに生きていくことという観点で使われるこの言葉は少し違ったニュアンスがあります。「心を開くこと」と言えばいいでしょうか。誰に対しても心を開くことには抵抗がある人が大多数だと思います。それは、心を開くと何が起こるかわからないからです。信頼した人に裏切られたり、人を好きになってうまくいかなかったというような経験を持ち出すまでもなく、毎日を何気なく生きているだけでも、油断するとちょっとしたことで思わぬ攻撃を受けて傷つく可能性に満ちているのがこの世界です。

ラジオ番組のインタビューでは、Dr.Brownは“feeling vulnerable”の例として「自分のビジネスを始めたり、大勢の前で初めてスピーチをしたり、自分から愛を告白したり、深刻な病気かもしれないと検査した結果を手にしたときに感じるあの気持ち」と説明しています。そして、それでも心を開くためには勇気が必要だと。なぜ心を開くのか?そこに出てくるのがこの言葉。

“Your capacity to be wholehearted can’t be greater than your willingness to be heartbroken”

実はインタビューでは最後の“heartbroken”“uncool”(クールでない)と置き換えられていますが、彼女にとっては“being vulnerable”“being uncool” とは同じことなのです。彼女は新しい本“Daring Greatly”の中で、今は「一生懸命にやっている」とか「ワクワクしている」ということがかっこ悪いことのように思われているけれど、それは人々が失敗を恐れているし、失望したくないからだ・・・と書いています。でもリスクをとらずに静止して「クール」を保っているときには、傷つきはしないかもしれませんが、その代わりに人との深い関わりが生まれることも、そこから何かが起こることもない。つまり「かっこ悪くても(傷ついても)かまわないという覚悟の大きさ以上に生きることの喜びを感じられることはない」ということです。私たちがネガティブと受け取る感情を避けようと心を閉ざしながら、喜びや愛情といった部分だけを心ゆくまで感じることはできないからです。彼女が引用していた映画“Almost Famous”(邦題「あの頃ペニー・レインと」)に出てくるこの会話では、この世に存在するあらゆる偉大なる芸術はuncoolということがテーマになっている、と語られています。心を閉ざして静止したまま「クール」に生きるか、傷つくかもしれないリスクをとって心を開いて、真に「生きている」という実感を味わうか。選択肢は常に私たちの手の中にあります。

“The only true currency in this bankrupt world is what we share with someone else when we’re uncool.”

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