未来は明るいですか?

Optimistic(楽観的)そしてPessimistic(悲観的)と言う言葉があります。人によってどの程度どちらの傾向があるかはさまざまですが、人類全体としては私たちはより楽観的なバイアスがあるのだという研究について読みました。“The Optimism Bias”という本についてリポートしたタイム誌のこちらの記事にこんな一節があります。

Optimists in general work longer hours and tend to earn more. Economists at Duke University found that optimists even save more. And although they are not less likely to divorce, they are more likely to remarry — an act that is, as Samuel Johnson wrote, the triumph of hope over experience.

楽観主義の人は(そうでない人より)長時間働き、収入も高く、たくさん貯金もする。また離婚率も低いし、離婚したとしても再婚する確率が高い、ということで、この最後の部分について英国人の作家サミュエル・ジョンソンは『希望が経験に打ち勝っている証拠』と言っています。さらにこの記事を読み進めていくと、例えば2001年9月11日にアメリカで起こった同時多発テロのときの記憶が、1年ほど経過したときにはかなり曖昧になっていたという調査結果などから、記憶というのは時間とともに再構築されていくものだ・・と説明されています。その際に、脳の働きとしてより明るい印象を持てるものが選択されていく可能性があるのです。また、人類全体の傾向として、“irrationally”(理性的とは言えないのだけれど)未来は明るいと思う傾向があるのだそうです。この本では、私たちはいずれ死ぬということを知りながらも、その知識だけでパニックになったり悲観的になって人類が死に絶えることがないよう、つまりサバイバルの目的で脳が楽観的なバイアスをかけるように発達したという説が展開されています。

確かに、たいした根拠はなくても「きっとうまくいく」「明るい未来が待っている」という風に思うことができなければ、結婚したり子どもをもったりする人は減っていくことは想像に難くないことです。特に結婚については、アメリカでは「世の中の結婚は半分以上の確率で離婚に終わる」という数字が出ているわけですから、これを「自分にはあてはまるまい」と少しでも思えなければ、一歩を踏み出すことはできないでしょう。この記事に対する読者の反響として「先進国では、テレビなどのコマーシャルで明るい未来を描くものばかりを見せ付けられているための現象ではないか。途上国で、そんな状況にない人々を対象にした調査結果が見たいものだ」というものがありました。これを読んで、確かに、ある物事についてどういう印象を持つかということは、もともとの傾向のほかにも、育っていく中で受け取るメッセージが大きく影響しているのではないか、と感じました。国別の調査などがあったら面白いのではないでしょうか。例えば、現在のところ未婚率がとても高い日本人の脳は、この記事の調査対象となった(であろう)アメリカ人の脳と比べてどうなっているのだろうか、という興味が湧いてきました。少なくとも結婚に関しては悲観的に考える人がそうでない人より多いのかもしれない(あるいは以前よりも多くなっているのかもしれない)という気がします。未婚率が高い原因は「絶食系男子となでしこ姫」の記事に書いたようにさまざまな要因が絡み合っているので一概には言えないでしょう。ただ、自分以外の他人と深い関わりを持つことについて、「面倒くさい」とか「怖い」という気持ちを超えて行動をおこせるほど楽観的になれないようなメッセージを日々受け取っていては、たとえ社会の状況が結婚や出産を奨励するようになっても、なかなか難しいのではないか・・・と感じました。


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