ホームスクールでも部活がしたい!

アメリカでは子どもを学校に送らずに親が子どもの教育の責任を担うというホームスクールを行う家庭の数が年々増えており、2007年には150万人ほどがホームスクールで教育を受けているという数字も出ています。そのためのサポート体制もますます整っている状況の中、今度は「ホームスクールで教育を受ける子どもたちに、近所の公立学校のスポーツのチームに参加する権利を与えよう」という動きが出てきました。アメリカで最も人気があるプロスポーツ、アメリカン・フットボールの選手にTim Tebowという人がいますが、彼もホームスクールで教育を受けて育ち、高校生になってから公立高校のチームに入った結果プロになったという経緯があります。このため、彼の出身であるフロリダ州以外にも28の州で「ホームスクールで育った子どもも公立高校のスポーツ・チームに参加できる」という趣旨の、”Tebow法”とニックネームがついた法律が成立し、さらに12の州でも検討されているそうです。

でも、この動きに批判的な人々もいます。例えば公立高校のスポーツ・チームには”Academic Eligibility”なるものがあり、一定の成績を維持しなければ部活に参加できないことになっています。普段は学校で勉強していないホームスクールの子どもたちにも部活に参加する権利を与えるとなると、ホームスクールの子どもたちに同様の基準を求めることが難しいため、極端なケースでは「学校を辞めても部活に参加できるなら」と考える人が増えるのではないか、という危惧があります。

また、さらに興味深いのは、ホームスクールを行っている親たちからも反対の声があることです。公立学校の「すべての側面」を拒否することでホームスクールのアイデンティティを保ってきたと考える人々にとっては、この動きは今まで積み重ねてきた流れに逆行するものと映るようです。ホームスクールのパイオニア世代の人々は、この選択肢が全く理解を得られていなかった時代から多くの困難を乗り越えて現在の環境を作ってきたため、ここで、都合のよいときだけ公立学校の活動に参加する「いいとこ取り」をしてしまって、学校という伝統的な教育形態と、ホームスクールの境界線をあいまいにしてしまうと、再び政府からの不必要な規制を招くだけではないかと恐れています。ある父親は「バージニア州にはホームスクールの子どもたちだけで成り立つスポーツのチームがいくつもある」と言って、この”Tebow法”に反対しています。

この”Tebow法”を支持する親の多くは子どもをプロ選手にしたいとは考えておらず、友達を作ったり人間形成をするためにスポーツをさせたいと言う人が大半のようです。ただ、高校の部活に参加することは、大学のスポーツ奨学金の考慮の対象になることも意味します。年々高騰している大学の学費の負担を少しでも軽減するため、この「うまくすれば奨学金が狙えるかもしれない」ことの魅力は大きなものがあるでしょう。また「ホームスクールをしていても、税金を納めているのだから、公立学校のリソースにアクセスすることは公平なことだ」と主張する人もいます。前述のバージニア州では下院では通ったこの法案が上院の委員会で一票の差により否決されており、どちらにしてもホームスクール・コミュニティでは引き続き注目される話題となっているとのこと。ホームスクールの存在意義が曖昧になるきっかけになるのかどうか、興味深くフォローしていきたいと思います。

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