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「うつ」とよりそう仕事術

以前から気になっていた本を最近やっと入手して一気に読みました。酒井一太さんという人が書いた「『うつ』とよりそう仕事術」という本です。実は著者の酒井さんとは過去に2回ほど「もう少しでお目にかかれるところだった」というシチュエーションがあり、今年になってご縁があってツイッターでも交流させていただいています。アマゾンを始めとした色々なサイトでも高い評価を得ているこの本は、タイトルどおり、「うつ」という病気を抱えながら職場に復帰する際に役立つ工夫の数々が書かれています。

まずこの本は実に読みやすい本です。平易な言葉で書かれていて、すっと頭に入ってきます。また書かれている工夫の数々の中には、「うつ病」ではないとしても、長期間にわたって体調がいまいちだったり、なんとなく気分が落ち込みがちな日々が続いたり(そういうことが全くないという人のほうが少ないのではないでしょうか?)、あるいは「やる気」がおきないとか、モチベーションが維持できないと悩んでいる人にとって役に立つヒントが必ず見つかるのでは、と思います。私自身、去年の夏ごろ、妊娠初期・中期あたりにかけては体調の悪さとともにやる気までしぼんでいた時期が長く続いたので、もっと早くこの本を手にしていれば・・・という気持ちになりました。本を読み終えて数日が経った今、一番心に残っていることは「心を開くということ」です。

以前こちらの記事に書いたように、例えば嫉妬や怒りなど、ネガティブだと認識している気持ちでいるとき、普通はそういう自分に正面から向き合いたくはないものでしょう。例えば子どもが言うことを聞かないとか、パートナーの配慮の足りない一言にかっとして思わずとった行動について、後から罪悪感を感じて反省したりはするでしょうが、そのことが起こっている瞬間は、往々にして、自分を正視したくない気持ちのほうが勝っているものです。でもそんなときに「心を開き続ける」というのは、そんな「いけてない自分」に抵抗せず、その正視したくないような気持ちともっと親密になること。もっと親密になり、友達になり、その気持ちの正体を良く知ることです。酒井さんは、うつという病気をかかえて、それでも会社に復帰して仕事をするためにどうしたらいいか考え抜き、自分の経験をブログと言う形でシェアしてきました。この本はそのブログで書かれていた「復職後の工夫」の部分に焦点をあてて、ご本人の言葉でいうと「カッコつけることなく、ありのままに」書かれたものです。本の中には、いろいろな選択肢の中で生きることよりも死ぬことのほうが魅力的にみえてしまう・・・と書かれた箇所があります(本書の工夫39で対策が示されています)。ブログや本と言う形で不特定多数の人々に向けてこういった気持ちの吐露をすることは、ときにとても勇気のいることでしょう。

生と死という選択ほど重いことではなくても、つい先日もこんな記事が酒井さんのブログにあがっていました。記事の最後に「だからこうしましょうというのがあるわけではないのですが・・・」と書かれているのですが、私はこの記事を読んで、心を開くとは結論(あるいは解決策)があるかどうかを気にせずに、今感じている感情に正直になることだ・・・と改めて思ったのです。英語では“(I’m) just putting it out there” つまり「(何になるかわからないけど)とにかく言ってみる(表現してみる)」というニュアンスの表現がありますが、これに近い「つぶやき」のような感じです。酒井さんを含め、誰でもいつも心を全開にできるわけではないでしょう。必要に応じ、場面に応じ、また相手に応じて、オープンにする度合いを調節するのが人間でありそれが「うまく世を渡る」ことでもあるでしょう。でも、まず自分に対してだけは正直になり、その次に可能なところから他に向けて表現していくこと。そのプロセスの繰り返しが好循環を生み、そのひとつの形がこの本だという気がします。

他にも印象に残った箇所はいくつかあり、例えば工夫15「気分に的を当てたコンテキストを用意する」などは全ての人にとって非常に有用です。「元気」とは「気を元に戻すこと」と聞いたことがありますが、これは「うつっぽいとき」という、落ち込んだ気分のときに行うと気分が上向きになることをリスト化しておく、というアドバイスです。あらかじめ用意してあったリストの行動を取るによって気分をコントロールするというのも、やはり自分を良く知っているからこそとれる対策だと思います。

また、この本ではパートナーシップの大切さについても触れられています。工夫37「目標を探すため、欲は否定せず大切に育てる」の最後の部分で、パートナーに自分の愛情や感謝の思いを伝える方法で、いちばん確実なのは会話の量を増やすこと、また うつ病を患っている人だけに限らず、愛情は二人で大切に育てていく姿勢が不可欠 と書かれています。今婚活中の方、すでに結婚生活何年目・・・と言う方にとっても、この言葉は示唆に富むものだと感じます。この箇所を読み、いつかご本人にお会いしたいという気持ちを新たにしたのでした。