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もう嫉妬しない!ではなく・・・

最近歩く時間が増えたので、また図書館のデジタル・ライブラリーで借りたオーディオ・ブックをiPodで聴き始めました(ハワイの公立図書館でもセレクションはなかなか充実しています)。最初に借りたのはPema Chodron“Awakening Compassion: Meditation Practices for Difficult Times”という本です。Pema Chodron(ペマ・チョドロン)はチベット仏教僧で、執筆や講演活動を精力的にしている女性です。2009年9月にシャスタ山での修行に参加したとき、彼女の“When Things Fall Apart”という本を読んで来るようにという指示があり、それ以来ファンになりました。実はこの写真の本は彼女のメッセージがそれぞれ見開き2ページで書かれたポケット版で、旅行先で買い求め、いつも鞄の中に持ち歩いています。例えばレジの長い列に並んでいるときにぱっとページを開けて見たりすると、少し気分を変えることができるのでとても役立っています。この本は講演の録音という形式をとっており、チャレンジに直面したときの呼吸法や瞑想の仕方について説明しています。鍵となる言葉は“Openness”つまり心を開き続けること。導入の部分でエゴについて語っている話をご紹介します。

人は誰でも「自分の好きな部屋」にいるのが好きです。ちょうどよい温度で、自分の好きな色や調度でしつらえており、好きな音楽がかかっているような部屋で過ごす時間は、当然ながらとても居心地がよいので、外に出たくなくなります。あるいは外の世界が脅威に感じられてくるかもしれません。たまに外に出ると自分の気に入らないものが目に入ったり、嫌な音楽が聞こえてきます。今までにないほど匂いなどにも敏感になり、あわてて部屋に逃げ帰ります。そのうち、外の世界の脅威が自分の部屋に入ってくることを恐れるあまり、空気が入ってこないように窓やドアを閉め切ったりしまいには隙間にも目張りをしたり、何重にも鍵をかけたりているうち、自分の好きなはずの部屋にいることが監獄のように感じられてくるかもしれない。エゴとは「自分の好きなものしか入れない」ようにすることで、それは自分を守るために始める行為なのですが、結局は自分を監獄に閉じ込めてしまい、その結果苦しみは大きくなってしまうということを彼女は言っています。エゴの大きさと苦しみの大きさは呼応していると。彼女によると、もしエゴがもう少し柔軟で、自分を鉄壁の防御で取り囲むのではなく、気に入らない状況に対しても少しでも好奇心をもつことができならば、かえって苦しみは軽減するのです。英語では“if ego is more ventilated”と言う言い方をしています。新鮮な空気をとりいれることができれば、というニュアンスです。

世の中の色々な宗教は、この「自分の居心地がよい場所にばかりいることはいずれ偏見や憎しみを生み出してしまう」と言う考え方では一致している・・・と彼女は言っています。エゴで凝り固まってしまうと自分以外の人はすべて敵になってしまうのです。ではどうしたら、もっと窓やドアを開けて、恐れることなく外界の空気や未知のものを取り入れていけるのか?そして、やってくるなにものにも心を開き続けていけるのか?ということがこの講演のテーマになっています。そして、このopennessの練習とは、自分の苦しい状況から自らを救うため、そしてもうひとつ大事な点としては、世界のどこかで同じ苦しみを経験している人のために行うのだと説いています。またその「苦しい状況」のなかに、自分の中の好ましくない感情についてどう対応するか、ということも含まれています。

例えば、先日「他人の成功を喜ぶこと」という記事で書いたように、誰でもときには人の成功を素直に喜べない気持ちになることもあるでしょうが、自分のそういった部分が嫌で仕方がないという人もいます。それは「他人の成功を素直に喜べる人でありたい」という思いがあるから、とも言えるでしょう。そうでなければ、嫉妬していてもそんな自分が嫌だとは感じないでしょうから。ペマ・チョドロンの教えは、自分が望まない状況への対応策としてだけでなく、「自分の綺麗でない部分」「立派な人でない自分」についても心を閉ざさずにいるためのものと言えます。「そのままの自分を受け入れるため」という言い方もできるでしょう。人間の器の段階として今はここにいるんだ、と言うことに対して抵抗することがより苦しみを増すことになるからです。言い換えれば一足飛びに「嫉妬しない人になる」ことを目指すのではなく、まずは「嫉妬する自分」に対しても親切な目を向け、その気持ちとより親密な関係になるということになるでしょうか。以前ある人がこう言っていました。“Perfection is never a goal. Practice is” 目指しているのは完璧になることではなく、努力し続けること。どこまで行っても終わりのない旅ではありますが、いつでも「練習」しているのだと思えば、自分に対しても少し優しくなれるのでは・・という気がします。